01. 埋める
例えば人を殺したとして、誰にも知られないようにひっそりと屍体を埋めるのだとしたら、それは少なくとも今よりは楽しいかもしれない。
ルシウス・マルフォイはそんなことを考えながら、足元の小鳥の屍体を見下ろした。
ルシウスが好むものは退廃と快楽、つまり彼の気を紛らせることの出来るものであり、彼が嫌うものは彼を退屈させる全てだった。だから今のこの状況はひどく彼の気に入らない。
学校の裏、禁じられた森の入り口あたり。
昨日、この辺りを散策している時に、休憩のために立ち止まった木の上からか細い啼き声がした。見上げた先には小鳥の巣。木の枝の、低い部分に巣があるため、中までよく見えた。
暇に任せて眺めていると、親鳥はどうしたものか、巣の中の小鳥は一羽を残して皆死んでいた。生き残った小鳥は小さな口を精一杯に開き、ぴいぴいとか細い声を上げている。
ルシウスはそれをしばらく眺めた。
別に哀れに思ったりはしない。弱いものは死んでゆく、それは自然の摂理だ。
そのまま眺めていると、ふと小鳥と目が合った。気がした。ぴい、と小鳥が啼いた。
ルシウスは小鳥から目を離さないまま一度瞬きをしてから、その場を立ち去った。
そしてここに戻ってきたのが、今日。
別に小鳥を心配して来た訳ではない。単純に、親鳥を失ったらしい小鳥がまだ生きていられるものなのかどうかを確かめに来た。
昨日と同じ木。同じ小さな巣。
あの小鳥は地面に落ちていた。
いかにも軽そうな、ちっぽけな体。
ルシウスが靴の先で軽く突付くと、ぴいとも云わずに首をくたりと垂らした。
ルシウスは眉を顰める。
こんなことは気に入らなかった。
この小鳥は、あのまま餓えて死ぬかルシウスに首の骨を折られて死ぬかするべきだったのだ。
勝手に死ぬだなんて。
力なく地面に横たわる小鳥の屍骸を眺めるうちに一層不愉快になる。
ちっ、と舌打ちをした時、背後から声がした。
「へえ、どういう風の吹き回しだ?」
「誰だ」
ルシウスは鋭く振り返った。
自分より辛うじて高いくらいの赤毛の青年が、そこに居た。
グリフィンドールのネクタイ。どうやら同じ学年らしいが、基本的に他人に関心の無いルシウスの知ったところではない。
ルシウスはすっと目を細めた。
「名乗れ」
「取り巻き連中の名前も覚えていないタイプだろ、お前」
「何の用だ」
有無を云わさず問い質すと、精悍な顔をした青年は別に、と笑った。
「スリザリンの貴族様はいつも優雅ですよね、とご機嫌伺うついでにおだてに来たんだ」
「それにしては随分な云い様だったようだが」
険を込めた目付きで切り返す。
男がまた少し笑った。
夕闇が迫っていた。
さ、と影が差す。
「これ。俺が埋めておくよ」
時間の無駄だとばかりに踵を返すと、後ろから「俺の名前はアーサーだ」と声が追い掛けて来た。
「下らん」
云い捨てて、ルシウスは振り返りもせずにその場を歩き去った。
アーサー、という名の男のことは、すぐにでも忘れることにした。
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