「砂時計の止め方」 3
時々唐突に謝られることがある。
別に喧嘩や口論をしていてそうなる訳ではない。突然相手が謝ってくるのだ。それも非常に申し訳なさそうに項垂れて。
学生時代にもこの現象は度々見られたので、つねづね不思議に思っていた私も「もしかしたらこれは何かの流行なんだろうか」などと考えたりもしたのだが、いまだ誰からも「突然謝る流行」の話を聞いたことはない。
自分の思い過ごしなのだろうか、あるいはもうその流行はとうに過ぎてしまったのだろうか、とも思ったりもするが、現在も度々周囲の人間に唐突に謝られることがある。
以前シリウスがテレビを見ながら「あーこれは20年くらい前にもマグルの間でブームになっていたな、彼らがこうやって流行り廃りを繰り返せるというのはある意味経済的でいいのかもしれない」などと云っていたので、もしかしたらあの「突然謝る流行」がまた今繰り返されているのかもしれない。それもまた妙な感じだ。唐突に謝って楽しいのだろうか。それともいかに唐突に謝ることができるかがステータスの一種になったりするのだろうか。
シリウスが帰宅したら尋ねてみようかとも思ったが、私はすぐに考え直した。
私はどうにもそういった流行り廃りには疎いので、結局流行を理解しようとすること自体が無駄なのかも知れず、だったらわざわざ恥をかくことはない。彼はあまり他人の失敗や無知を笑ったりはしないが、あまりにも人並以下の無知を晒すと遠慮なく笑ってくれる。20年前にも流行ったものなのだとしたらきっとそれは非常に有名なのであろうし、だとしたら彼はきっと腹を抱えて笑うことだろう。それだけは避けたい。
私は昨夜シリウスが偶には旅行に出たい旨を述べ、私が反対し、それに対して彼が「もしも雷が落ちてこの家が燃えてしまったら」と云い、私が「じゃあ洞穴を探して住まないと」と返答した途端に項垂れて私に謝罪したのを思い出し、流行を知る彼には訊く訳にはいかないと決意を固めた。
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