「砂時計の止め方」 2


リーマスに云わせると俺の趣味は一般人と比べて非常に多いらしいのだが、俺は彼の云い分に常々不満を抱いている。
そもそも趣味というものに境界線は薄い。
例えば職業なんかはほぼきちんと線引きされてあって、種類によってはある程度ハードルもある。だからカウントするのにフェアもアンフェアもないのだが、これが趣味となると話は違ってくる。
趣味は、その人間が「これが趣味だ」と宣言した瞬間から趣味なのである。
反対に云えば、本人が趣味だと思っていなくても、周りの人間が「あれが趣味なんだろう」と思った瞬間からそれは趣味になってしまったりもする。
俺の場合は後者のケースが圧倒的に多い。要するにアンフェアになりがちだ。
例えば読書やテレビ観賞や音楽観賞は趣味だ。どれも楽しんでいるし、気に入っている。
だが家具を作ったりセーターを編んだり料理を作ったりするのは決して趣味ではない。単にある程度技術があり、かつ手ごろな物がなかなか見つからず、あるいは既存のものでは満足しない場合にとる手段なのである。どうせ少しばかり器用なのだから、わざわざ欲しい物を探し回らずに、専門書でも読んでそれに倣って自分でつくればいいじゃないか、と思うのだが、リーマスはそうは思わないらしい。
「自分で作れるんだからいいじゃないか」
俺は今日も古くなってしまった椅子の代わりになる新しい椅子を作りながら、大人気なく唇をへの字に曲げた。
「買った方が労力も少ないし、同じものがいくつでもあるから楽じゃない?」
「だけど家具ってものは大抵そこそこ長持ちする上に、流行り廃りは一人前にあるんだ。今まで使っていたものをどんなに気に入っていても、ある程度月日が経っていたらもう同じものは売っていないのが普通じゃないか。それこそ不便だ」
「でもそうしたら違うのを買えばいい、我が侭なことを云ってないで」
俺はその返答に少々むっとして顔を上げた。
リーマスは行儀悪くテーブルに腰掛けて足をぶらぶらさせている。
「じゃあリーマス、例えばお前の家の椅子が全部一遍に壊れたとする。他に予備の椅子は無い。お前が椅子を買いに行ったとして、売っているものが全部気に入らなかったらどうするんだ?」
「気に入らなくてもどれか選ぶと思うよ」
「じゃあ全部売り切れていたら」
そんな事態は多分有り得ないと思うのだが、あまりにもリーマスが飄々と答えるので俺はついそんな例を出してみた。
勿論ここまでくれば「自分でつくる」という選択肢を選ぶに違いない、とう打算の上だ。
「無かったら床に座るよ」
俺はしばし絶句し、手にしていた金槌を取り落としかけた。
常識をベースに生きている俺には確かにある意味斬新な意見だった。
「何て云うか……俺が悪かった」
リーマスは無ければ諦めるタイプだからそもそもコメントを求める俺がどうかしていたのだ、と俺はやっと学習した。


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