080 : ベルリンの壁
タイトルは思い出せないけど、昔見た有名な映画。凄く古くて、白黒だったはずだ。
家から逃げ出してきた女の子が、男と出会う。
確か、途中でヒッチハイクするシーンなんかがあって。
男がいくらやっても車は素通りするのに、女の子がスカートを直す振りなんかすると車が速攻で止まる、ってエピソードが入っていたっけ。
男とその女の子は都合上同じ部屋に寝るんだけど、男の方が絶対に何もしないって宣言して、シーツをベッドの間に張る。 これは何とかの壁だからラッパを吹かなきゃ絶対に崩れない、とか何とか云いながら。
それで、最後に二人が結ばれるときに、男がラッパを吹き鳴らす訳。
……あの映画、なんてタイトルだったっけ……。
壁に背中をつけて、ぼんやりと目の前の床を見つめる。
一緒に寝るはずだったけど、今はお互い壁越しに過ごす夜。
別に悪いのは俺じゃない。全部相葉ちゃんのせいだ。
そんなことを思ってみても、やっぱちょっと後悔はしてる訳で。
一人でホテルの部屋に居るのって居心地悪いな、とか思ってみたり。
ずるずると這ったままベッドサイドまで行き、鞄を探る。
取り出した携帯を片手に散々躊躇った末、相葉ちゃんに掛けてみた。
「……相葉ちゃん?」
「どうしたの?」
「壁越しだよね、俺達」
「そうだね」
「……」
「……」
ちょっと沈黙が続いて。
どうしよっかな、と思っていると、不意に俺の部屋のドアが開いた。
「え?相葉ちゃん?」
携帯を耳に当てた姿勢のまま、驚いて相葉ちゃんを見上げる。
「ベルリンの壁ー」
そう云って微笑む相葉ちゃんに、完敗。
俺は不覚にも嬉しくなってしまいながら、相葉ちゃんの腕の中に収まった。
「……全然ベルリンの壁じゃないじゃん」
「うん。そうだよね」
「しかも壁壊してないし」
「うん」
「ドアから入ってきたじゃん」
「あはは」
最初考えていた壁とは違うけど。
どっちにしても壊れちゃえばみんな同じかな、と思った。
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