075 : ひとでなしの恋



最近の松本さんは、傍から見てもひどく落ち込んでいて。
特に今日は絶望的。
それなのに、普段だったらそんな松本さんを慰める相葉ちゃんが、今日に限っては松本さんに無関心で。
喧嘩でもしたのかな。
読んでいた雑誌からちょっと目を上げて、そう思う。

憔悴しているのに何とか押し隠そうとする松本さんを見ていられなくて、つい色々と気遣ってしまう。
はっきりと態度に出す訳にはいかないし、こんなことは本当は相葉ちゃんがするべきだって解っているんだけど。
相葉ちゃんの方を気配だけで窺って、それからゆっくりと目を伏せる松本さんの横顔が、痛くて。

だから、仕事が終わってから松本さんが悲しげに俺に触れてきたとき、俺は何も云わなかったんだ。

結構固い奴なんだよ。松本さんは。
愛情表現とかあんまりしないらしいけど、その代わり他の人を見たりはしない人だし。
普段だったら、冗談ごかしてではあるけど、いくら誘ったって応えてくれることなんかない。
それが俺には一層辛かったりもするんだけど。

そんな松本さんを、こんなになるまで放っといちゃうなんてさ。
いくら何でも酷過ぎると思いませんか?相葉ちゃん。
俺も人のことは云えないんですけどね。

松本さんに触れながら、熱い吐息を押し殺しながら、俺は心の中でそっと囁く。
今にも泣き出しそうな顔で、それでもたった一時の快感で自分を騙そうとする松本さんに、切なくくちづけながら。

体で慰めることが間違っているなんて、考えなくたって解ってる。
本当は、松本さんを宥めてやめさせるべきなんだけど。
缶コーヒーの一本でもおごってやって、相談にでものってやって。
それから、背中を叩いて相葉ちゃんの方に押してやるべきなんだ。
だって松本さんに必要なのは相葉ちゃんだから。
俺じゃなくて。

それが出来ない程度に、俺は人でなしなんですよ。
……切ないですね。