024 : ガムテープ
「ねえ、松本さん」
「んー?」
「頼みがあるんですけど」
「……何?ニノ」
「縛ってみてもいいですか」
そう訊いたら、静かな口調で「いいよ」と云われた。
それから、お互いに無言で。
俺は黙々と松本の服を脱がせて、タオルで手首を縛っていく。
それをそのまま上に上げて、もう一本タオルを使ってベッドに括りつける。
同じようにして両足も固定して。
少し申し訳ないと思いつつ、口にガムテープを貼った。
額に、キスをして。
ゆっくりと目を閉じた松本のまぶたにも、もう一つキスを落とした。
丁寧に、壊れものを扱うように松本に触れる。
首筋にそっと押しつける唇。
緩やかに肌を辿る指。
お互いの呼吸と、心臓の音だけがここに存在する全ての音。
熱を持ち始めたそれを手で包み込み、触れた指の上からくちづけると、眉をひそめて少し体をよじった。
心なしか頬が少し紅潮し始めていて、俺はそんな松本に目を細めた。
好きですよ、と唇の動きだけで告げる。
あなたが、好きです。
ゆるやかに加速してゆく熱と、俺を見つめる松本の視線。
動物ならただ生きているだけで得られるという恍惚感を、人間はこんなにも遠回りをして手に入れようとするけど。
指をそっと押し込めると、松本が切なげに首を振った。潤んだ目で薄い胸を何度も上下させる。
それから、松本を気遣いながら中に入って。ゆっくりと動き始めると、松本が何か云いたそうに俺を見た。
きっとガムテープのせいで呼吸が苦しいのだろう。
だけど俺はどうしてもそれを剥がしたくなくて。
あまり松本に負担を掛けないように丁寧に動く。
松本の中は勿論気持ちいいんだけど、快感に歪むその表情を見ていたら堪らなくなって。
頬を紅潮させて俺を見つめ続ける松本を深く抱き締めて、その瞬間を迎えた。
何て云われるだろう。
松本の自由を奪っていた手首のタオルを解き、固定していた両足も自由にする。
口に貼ったガムテープを剥がすのに、一瞬躊躇した。
松本は何て云うだろう。痛ぇよ、とか?馬鹿、とか?あるいはお前ってほんと悪趣味、と罵られるのだろうか。
そう思いながらそっとガムテープを剥がす。
早速罵られるだろうと覚悟していると、意外なことに松本は無言のままだった。
「松本さん?」
恐る恐る声を掛けると、松本が変わらず静かな目で俺を見た。
「……云っとくけど、俺別に怒ってねぇから」
「え?」
「余計な言葉って、時々あんまり要らないよな」
「そうですね」
俺も頷き返して。
そのまま無言でお互いにもたれかかった。
|
|