依存症 3



「じゃあ、また後でね」
囁きと共に唇が離れて。小走りに去ってゆく足音を遠く聞きながら近くの壁に寄りかかる。
長いキスのせいで上気した頬に室内の空調が心地よかった。
……こんなの絶対に間違ってる。
ニノと付き合ってるはずなのに、相葉ちゃんとも寝るなんて。
そんなこととっくに解っている癖に、それでも俺は結局ずるずるとこの関係を引きずっていた。
もう、やめるべきだ。
確かに今はニノに知られていないし、誰にも勘付かれていない。だけどいつまでもこの状態が続く保証がどこにも無いことも俺は理解していた。
こんな関係、やめないと。そう思うのに。
俺が好きなのはニノ。相葉ちゃんじゃない。
なのに彼の唇を、手を、体温を拒めないのは。
何故だろう……。


別にセックスがしたくて相葉ちゃんと寝てる訳じゃない。
こう云うと矛盾してしまっているのは知ってるけど、でもそれが結局のところ俺が相葉ちゃんとも寝ている理由。
ニノとのセックスは勿論気持ちいいし、実を云うとニノのこともかなり好きだし。
だからニノとセックスしている時につい二日ほど前相葉ちゃんにも抱かれたことを思い出してちょっと申し訳ないなと思ったりもするし、そんな時はニノ以外の奴に触れられたということに後悔を感じてしまったりもする。
でも、そうやって後悔とか罪悪感とかを感じているのに、俺はこの状態を変えようとなんて全然しちゃいない。
それでいて俺はまた、相葉ちゃんが俺を誘うであろうことを知りながら相葉ちゃんと目を合わせるんだ。
ほんと馬鹿だね。
はあっと盛大に溜め息を吐いて、白い天井を見上げる。
こんなにも白々しく悲劇の主人公の振りをしているのに、まだ誰も俺の演じている虚飾を夢想だと指摘しちゃくれない。
もうそろそろいい加減目を醒まさなければならないんだけど。
今の状況も俺の馬鹿げた芝居に付き合ってくれてる奴らも、まだ夢を破ることなんか必要となんかしていないっていう厳しい矛盾があって、俺はそれに戸惑ったままでいる。
多分、だから俺は流されっ放しなんだ。この状態が決して綺麗なものなんかじゃなくても。
ああもう、俺達って若いよな。

だからさ、馬鹿なついでにニノにも事実を打ち明けてしまおうと、思っているんだ。

「先週の火曜日、相葉ちゃんと会ったんだ」
「仕事じゃなく、プライベートで」
「俺達もよく行くホテルの一室で」
「相葉ちゃんと、寝たんだ」

そう云ったらニノはどう反応するだろうか。
怒るかもしれない。切り捨てられるかもしれない。この行動が導き出す結果がちょっと怖いのも事実だけど。
相葉ちゃんの見せる優しさや温もりに縋らずに居られない俺は彼に依存しきっている。
それでもニノの相槌を望んでしまう俺はきっと病気なんだろうね。

悪いね。
愛してるよ、ニノ。

the end.