依存症
何て説明したらいいんだろう。
別に逃げ出したい訳じゃない。諦めた訳じゃないけど、何もかもがあまりにも性急に過ぎていってしまうから。
ほんの少しだけでもいい。待っていて欲しい。
理由なんて本当はよく解らないんだけど、多分人がみんな結局は一人きりなのがいけないんだ。
だから、誰かに頼りたくなる。待っていてくれる誰かが必要になる。
何故だろう、そんな誰かの存在をひどく切実に願っている自分が居る。
急に、ただ会いたくなった。
本番前の楽屋。いつも通りの朝。
すぐ近くにいる相葉ちゃんに会いたいなんて思っている自分がちょっとおかしい。
今こうやって同じ楽屋に居て、しかもこれから同じ仕事を一緒にする相手に、今更会いたいも何もないんだけど。
だけど、何故だろう。
最近時々そんな瞬間が訪れる。ひどく懐かしいような、全てを投げ出したいような瞬間が。
俺は何の気もなく開いていた雑誌から顔を上げて相葉ちゃんを見た。
ニノと談笑している相葉ちゃんはいつもと全く同じ相葉ちゃんで。普段と違うところなんて一つだって無いのに。
翔くんではなく、大野くんでもなく、……ニノですらなく。
何故だか他の誰よりも相葉ちゃんに目が行った。
ぼんやりと視線をさまよわせていると、俺の視線に気付いたらしい相葉ちゃんがフイとこっちを見た。
一瞬、視線を逸らすべきか迷う。
だけど俺がニノとのやり取りを眺めていると思ったのか、その視線はすぐに逸れた。
だらだらと怠惰に流れる時間。
壁に掛かった時計の秒針の緩慢な動きが堪らない。
雑誌のページをペラペラと手で弄びながら、黙って相葉ちゃんを眺めているうちに本番に呼ばれた。
俺はいつもの我ながら素っ気無い返事と共に、薄っぺらい雑誌を投げ出して立ち上がった。
仕事が済んで、同じ楽屋に戻る。
仕事の後のちょっとした倦怠感と軽い開放感が、今日は何だか普段よりずっと気だるく感じられる。
帰りの支度をしながら、ニノがさり気なく明日はオフなのかどうか訊いてきた。
こうやって訊いてくる以上、ニノも明日は特に予定なんて無いのだろう。
あまり目立たないように微かに頷いてから、俺は無言のまま支度する手を早めた。
ドアを出る時にちらっと見た相葉ちゃんは何故か俺を見ていたようだった。
今夜俺はニノの名前を呼ぶ。
ニノだけを見つめて、熱い吐息と共に囁く。
俺の手首をシーツに縫い止める手と、繋がる下半身と、汗で張り付く髪をかきあげて俺にくちづけるニノの熱に浮かされた視線。
他のことなんてきっと全部つまらないことのように思えてしまう。
距離を熱で埋めあって。俺はニノでいっぱいになって。
……でも、もしかしたら。
もしかしたら俺は、ニノの腕の中で君のことを考えてしまうかもしれない。
だって俺は、こんなにも今、君に会いたい。
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