Can't take my eyes off of you
最近体重ヤバいよな……。
体重計の目盛りを覗き込みながら、松本はふうと重い溜め息を吐いた。
別に少しくらい太ったって困りはしないけど、だからって太ってもいいって訳じゃない。
最近ちょっと調子に乗って食べ過ぎたかもしれない。
くそ。
「ニノ〜、今日暇?」
「暇じゃない」
「なんで?」
「家に帰ってゲームを終わらせるんです」
「そんなのまた今度で良いじゃん」
「ヤダ」
計算が狂って、松本は眉を顰めた。
ニノなら誘いに乗ってくると思ったのに……。
セックスって適度な運動だし、ちょうどやりたかったってのもあって、体重を落とすのにぴったりだと思ったんだけど。
減量の効果をそこまで期待してた訳じゃないけど、 思惑が外れたのがちょっと気に入らない。
別にそんな急に痩せなきゃいけない訳じゃないけど、明日以降ニノに会える可能性は半々だし。
今日だけがチャンス、という感じ。
それに今日はそういう気分だしね。
どうしようかな、と松本は思考を巡らせる。
命の次に大切なゲームを二宮が易々とそう簡単に諦めるはずはない。
帰宅の準備を早々に済ませてゆく二宮を止める方法もすぐには思いつかないし。
かと云って断られっ放しっていうのも癪だった。
苦し紛れに、咄嗟に思いついた言葉を口にしてみた。
「お、送ってってよ」
「?良いけど」
早くしろよ、とニノがこちらを見て云う。
そのままニノと車に乗り込み、発進させる。
……そういえば通い慣れた家までのルートの途中にはいつも通っているシティホテルがあったはずだ。
ホテルに近付いていくにつれ、松本は必死に引き留める云い訳を考え始めた。
「あ!い、いたた……?」
「え?おい、大丈夫か?」
お腹を抱えて腹痛を訴えてみる。
ニノがちょっと驚いた感じで俺を見て、路肩に車を寄せた。
よっしゃビンゴ。
心配気なニノに、わざとハァッと息を吐いてみせる。
休みたいんだけど……、と松本は二宮を見上げた。
「休むって云ったって……」
困ったように云って、二宮が周囲を見回した。
通い慣れたシティホテルは目の前にあるものの、そこはどう見たって具合の悪い人間を連れ込むには向いて居ない。
でも周囲にはファミレスも喫茶店も無い訳で。
「……どこでもいいから……」
そう云って、駄目押しをするようにニノに向かって弱々しく微笑んで見せた。
とりあえず連れ込んだシティホテルの一室。
辛そうな表情の松本を抱えるようにしてゆっくりと歩かせて、ベッドにそっと座らせた。
「ごめん……ニノ」
よほど具合が悪いのだろう。
それは解っていたけれど、上目がちに見上げてくる松本に妙に胸が高鳴った。
「……良いよ別に。具合悪いんだろ?」
妙に素っ気無い云い方に、松本は自分の計画が上手くいっていることを確信した。
さらに、水を取ってくる、とベッドから離れようとした二宮の腕を掴む。
潤んだ目で、ことさら見せ付けるように呟いて見せた。
「……行かないで?」
「え……」
二宮の目が泳ぐ。
「ね、ニノ。お腹、痛いんだけど……?」
熱っぽく囁いて、掴んだ手をゆっくりと引き寄せた。
両手で包み込んだニノの手を口許にそっと運ぶ。
「……駄目……?」
ほとんど舐めるようにして二宮の指先に囁きを落とす。
……やられた。
仕方ないな、と軽く笑って見せた二宮は、それでも熱に浮かされたような目をして松本に口付けた。
もっと、と促すように松本は自分から舌を絡める。
だんだんその気になってゆく二宮が更に口付けを深くしてゆく。
ゆっくりと加速してゆく激しさに応えながら、松本は二宮に気付かれない程度に口の端を上げた。
――勝った。
the end.
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